雑学

【フジバカマとアサギマダラ】旅する蝶がなぜ秋の花フジバカマに集まるのか?

皆さんこんにちは
花を買う人(はなを)です。

フジバカマの花の画像を調べていると、フジバカマの花に蝶や蜂が止まっている画像がたくさん出てきました。フジバカマの花と蝶が一緒に撮影されているのは偶然ではなく、実は蝶にとても人気な花だったらしいのです。ということで今回は、フジバカマの花と蝶(アサギマダラ)の関係性について調べてみました。

秋の美しい風景と、蝶が集まる不思議

作者: Cham-Qutan

秋風が吹き始める頃、ひときわ優雅に宙を舞う大型の蝶がいます。その透き通るような美しい青緑色の羽を持つのが、アサギマダラです。彼らは日本列島を南北に縦断する「旅をする蝶」として知られており、秋には本州から遠く南方の台湾などへ、2000kmを超える長距離を移動することがマーキング調査によって確認されています。

このアサギマダラが、旅の途中で必ずといっていいほど立ち寄るのが、藤袴(フジバカマ)秋の七草の一つで、その群生は秋の風物詩となっています。

しかし、この美しい光景には、不思議な事実があります。実は、花に群がっているアサギマダラは、ほとんどがオス(雄)なのです。なぜ、オスだけがこれほどまでにフジバカマに夢中になり、遠い旅の途中であってもこの花を「選ぶ」のでしょうか。その秘密は、フジバカマが持つ特殊な成分と、アサギマダラの「生存戦略」に隠されています。

秋の七草「フジバカマ」ってどんな花?

作者: SUN21

アサギマダラを強く惹きつけるフジバカマは、キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物です。 秋の七草として古くから知られており、『源氏物語』や『万葉集』といった古典作品にも登場する、日本人になじみ深い花です。9月から10月にかけて、淡い紫色(ピンクがかった花)の小さな花を房状に咲かせます。

生の状態ではほとんど香りがありませんが、茎や葉を乾燥させると、桜餅の葉のような独特の甘い芳香を放ちます。そのため、古くは匂い袋(香袋)としても利用されていました。

かつては川辺や野辺に自生していましたが、河川工事や環境の変化により数を減らし、現在では環境省のレッドデータブックで「準絶滅危惧種」に指定されるほど、貴重な野生種となっています。

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オスだけが集まる理由:蝶にとって「薬」となる毒

作者: ヒロタカ05

アサギマダラのオスがフジバカマに強く惹きつけられるのは、花に含まれるある特別な化学成分が理由です。その成分こそが、ピロリジジンアルカロイド(PA物質)です。

PA物質とは、キク科など特定の植物に多く含まれる天然の化学成分です。実はこの成分、多くの昆虫や生き物にとっては「毒」にもなりうるものです。しかし、アサギマダラのオスにとっては、このPA物質はただの毒ではなく、「薬」。欠かせない栄養素なのです。

アサギマダラのオスがPA物質を必要とするのには、主に2つの重要な理由があります。以下で理由について解説します。

理由① メスを惹きつける「愛の匂い」の原料

作者: ヒロタカ05

最も重要な役割は、性フェロモンの原料となることです。フェロモンとは、動物が体の外に分泌し、仲間や異性に特定のメッセージを伝える匂いの物質です。

アサギマダラのオスは、フジバカマの蜜を吸ってPA物質を体内に取り込み、それを原料にしてメスを惹きつけるためのフェロモンを作り出します。京都市のフジバカマ園の管理者の話からも、「フジバカマの蜜にはメスを集めるフェロモンがあるからオスが吸っている」とされています。

PA物質を摂取する行動は、単にフェロモンを作るためだけでなく、交尾の行動そのものを活性化させる物質としても働くことが発見されています。この成分が脳や神経系に作用し、生体アミン類という物質を増やすことで、繁殖行動を活発にするのです。このため、PA物質を十分に摂取できないオスは、フェロモンを作れず、子孫を残すことができなくなってしまいます。

このように、成長や生存維持に必須ではないが、特殊な行動(この場合は繁殖)のために特定の成分を植物から摂取する習性は、「薬物食性(やくぶつしょくせい)」と呼ばれます。この習性によって行動が活性化される例は、アサギマダラの雄で初めて科学的に確認されました。

理由② 天敵から身を守るための「毒」

作者: 水玉模様3

PA物質は、アサギマダラが天敵から身を守るための防御物質としても機能していると考えられています。

フジバカマの蜜のを体内に蓄積することで、アサギマダラ自体が苦い味になり、鳥などの捕食者から襲われるのを防いでいるという説があります。幼虫時代から、食草であるキジョラン(ガガイモ科植物)にもPA物質が含まれており、彼らは生涯を通じてこの毒(薬)と共に生きるのです。

まとめ

いかがでしたか。今回は、アサギマダラがフジバカマに集まる理由を解説しました。一見すると美しい花の蜜を求める単純な行動に見えますが、その裏には、PA物質という特殊な成分をめぐる、種の存続をかけた巧妙な生存戦略が隠されていました。

フジバカマは旅する蝶に「愛の原料」と「防御の毒」を提供し、アサギマダラはそのおかげで長距離の旅と繁殖を成功させています。特定の花を求める蝶の姿は、自然界の知恵と生命のつながりを教えてくれる、神秘的な共生なのです。

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